遠距離恋愛ってまわり道のことなのか。
読書が図書館頼みなら、映画はTSUTAYA頼みです。
それも旧作・準新作が半額のときがねらいですね。
昨日は劇場公開のときに行く気満々だったのに行かなかった、
という、いつまでも気になっていた洋画2本借りてきました。
大好きな映画監督ウォン・カーワァイの『マイ・ブルーベリー・ナイツ』と、
『ラスト・コーション』がよかったアン・リー監督の『ブロークバックマウンテン』。
アジア映画の監督が好きみたいですけど、まあそうです。
かつての香港映画(返還前)には、いろんな感性が混ざり合った、
特別な活気とパワーがあって、俳優もスタッフもほんとうに魅力的でした。
この2人も、そのころから活躍していましたが、いまや世界的な映画監督に。
今回はそれぞれアジア系ではない俳優を使い、
アジア圏ではない場所で撮った映画です。
それにしても、まったく偶然なのですが、この2本には共通テーマがありました。
“遠距離恋愛”、そしてそれは“距離”と“時間”です。
『マイ・ブルーベリー・ナイツ』は、とてもわかりやすい。
失恋したての女の子は、恋人の家の鍵を預けたカフェで、
なぜかいつも売れ残るというブルーベリーパイを食べます。
マスターは、そのパイをメニューからはずそうとはしません。
いつか食べたいと思ってくれる人がくるはずだから。君みたいに、と。
傷心の女の子は、優しいマスターと甘いブルーベリーパイに慰められます。
そして彼女は失恋を引きずる自分にサヨナラするために、
目の前の横断歩道を渡らずに、いちばん時間のかかる遠回りをしようと旅立ちます。
そうなんですね、目の前の横断歩道を渡った先には、マスターのカフェがあるはず。
彼女は大陸横断バスを乗り継ぎながら、
どんどんカフェのあるニューヨークから遠ざかり、
食堂やバーで働きながら、いろいろな人と出会い、
感じたこと、想いを書き綴り、マスターに手紙を出します。
なぜ電話をしないんだという常連客の問いかけには、
手紙の方が想いが伝わることもあるから、と答えます。
こうして、どんどん遠ざかりながら、どんどん近づいていく、
女の子とマスターの遠距離恋愛が描かれていくのです。
目の前の横断歩道を、いちばん遠回りして渡ろう。
ここらあたりの感覚が、いかにもウォン・カーウァイらしいですね。
ほんとうに大事なものは、時間をかけて手に入れる。
ある日、昨日の続きのように、目の前の横断歩道を渡って、
女の子がカフェにやってきます。
そして、昨日の続きのように、マスターは売れ残りのブルーベリーパイを、
彼女の指定席に出すのです。
観終わると、無性にブルーベリーパイが食べたくなって、旅がしたくなります。
『ブロークバックマウンテン』は、ワイオミング州のブロークバックマウンテンで、
放牧された羊の管理をする仕事で出会った二人のカウボーイの、
20年にわたる秘密の関係を描いた作品です。
20歳そこそこの若者が経験する、山奥での過酷な仕事。
でも、二人の関係が友情からもっと先に進んだとき、
その場所は二人にとっての楽園に変わります。
たった数ヶ月の楽園の日々が忘れられずに、
それから20年間にわたる彼らの苦しみが始まるのです。
同性愛者と知れればリンチで殺されてしまうような場所で、
彼らは互に女性と結婚し子どもをもうけ、年に何度か、二人だけで山に行きます。
テキサスで結婚した若者は、14時間かけて恋人に会いに来るのです。
それでも、二人は“愛”を口にすることはありません。
ただ、二人で山にいる時間だけが、彼らにとってのほんとうの時間なのです。
20年間、でも会っていた時間はつかの間。
そして、一人が路上で突然の死を迎えます。
事故だといわれますが、もう一人の男には、
リンチで惨殺される男の最後がリアルにイメージされるのです。
残された男は、離婚し、トレイラーで暮らすほどに落ちぶれて行きます。
でも、彼はやっと本来の自分として生きられる場所にたどり着いたのです。
恋人が送ってくれたブロークバックマウンテンの絵はがきと、遺品のシャツに、
彼は毎日のように語りかけるのでしょう。
「これからは、ずっといっしょだよ」と。
愛を愛だと言えないために、彼らはほんとうにまわり道をしました。
いっしょに牧場で暮らそうという夢を、生きているうちには実現できなかった。
なんか、泣けて仕方なかったです。
『マイ・ブルーベリー・ナイツ』 My Blueberry Nights (2007/香港・中国・仏)
監督/ウォン・カーウァイ 出演/ノラ・ジョーンズ、ジュード・ロウ
『ブロークバックマウンテン』 Brokeback Mountain (2005/米)
監督/アン・リー 出演/ヒース・レジャー、ジュイク・ギレンホール
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